はじめに
イタリア・ローマの観光名所といえば「真実の口(Bocca della Verità)」。 オードリー・ヘップバーン主演の映画『ローマの休日』で有名になった、あの顔の彫刻です。
「嘘つきが手を入れると、食いちぎられて抜けなくなる」 という伝説を信じて、ドキドキしながら手を入れるカップルが後を絶ちません。
しかし、もし古代ローマ人がその光景を見たら、腹を抱えて笑うでしょう。 「おいおい、なんであいつら『下水道のフタ』に手を入れてるんだ?」
そう、あのありがたい石盤の正体は、古代の「マンホールの蓋」なのです。
巨大な「排水溝」だった
真実の口が作られたのは、紀元前4世紀頃。 元々は、ローマ市内にあったヘラクレス神殿近くの広場に設置されていた「下水溝のフタ」でした。
あの大きく開いた口や目、鼻の穴。 あれは、嘘を見抜くための穴ではなく、「雨水や広場の汚水を、地下の下水道に流し込むための穴」だったのです。
なぜ「顔」がついているの?
「ただのフタなら、なんであんな怖い顔をしているの?」 と思いますよね。
あの顔のモデルは、「オケアノス」という海(または川)の神様だと言われています。 当時のローマ人は、 「下水は、川の神様が飲み込んで処理してくれる」 と考えていたため、マンホールのデザインに神様の顔を採用したのです。 (※日本でも、マンホールに桜や観光名所が描かれているのと同じ感覚かもしれません)
「嘘発見器」になったのは後付け
では、いつから「嘘発見器」になったのでしょうか? それは、マンホールとしての役目を終えて、教会の壁に飾られるようになった中世以降の話です。
当時の人々が、 「この怖い顔の口に手を入れて、抜けなくなったら面白いんじゃね?」 と噂話を作り、それが 「心にやましいことがあると手が抜けない」 という伝説に発展したと言われています。 映画『ローマの休日』のグレゴリー・ペックの悪ふざけも、この伝説を元にしたものです。
まとめ:ロマンと下水
- 「真実の口」の正体は、古代ローマの「マンホールの蓋」
- 口や目の穴は、水を流すための排水口だった
- モデルは海の神様(オケアノス)で、水を飲み込む役目があった
- 「嘘つきの手を噛む」伝説は、中世以降に作られた作り話
現在、真実の口の前には、記念撮影のために世界中から観光客が行列を作っています。 次にあの映像を見たら、 「みんな、マンホールに手を入れて楽しそうだな……」 と、生温かい目で見守ってあげてください。 ある意味、それが歴史の「真実」なのですから。


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