はじめに
沖縄旅行の定番グルメといえば、「沖縄そば」や「ソーキそば」。 カツオ出汁の優しいスープに、太めの麺、そしてトロトロのお肉。最高ですよね。
でも、食べている時にこう思ったことはありませんか? 「あれ? 日本の『お蕎麦』と全然味が違うな……どっちかというとラーメンやうどんに近くない?」
その直感、大正解です。 実は沖縄そばには、「そば粉」は1%も入っていません。 原料は「小麦粉100%」。 つまり、成分だけで言えば、あれは「うどん」や「中華麺」の仲間なのです。
法律で「そば」と呼ぶのが禁止された
「成分が小麦粉なら、なんで『そば』って呼んでるの?」 実はこの名前、かつて消滅の危機に瀕したことがあります。
本土復帰後の1976年、公正取引委員会(国の機関)から、沖縄の製麺業者に衝撃的な通達が届きました。
「『そば』という名称は、そば粉を30%以上使っていないと使用してはいけない(公正競争規約)」 「沖縄そばにはそば粉が入っていないので、名前を変えなさい」
法律の壁です。 国は、「沖縄ヌードル」や「沖縄風中華麺」といった名前に改名するよう迫ったのです。
沖縄県民の猛反発
これに怒ったのが、沖縄の人々です。 「俺たちは昔からこれを『すば(そば)』と呼んで愛してきたんだ!」 「今さら『沖縄ヌードル』なんて呼べるか!」
沖縄県民にとって、そば粉が入っているかどうかは関係なく、あの太い麺こそが「そば」そのものでした。 そこで、組合を結成し、国に対して粘り強い交渉と署名活動を行いました。
勝ち取った「特例」
沖縄側の熱意に押され、ついに国も折れました。 「地域独特の食文化として認めよう」
こうして、そば粉が入っていないにもかかわらず、特例として「沖縄そば」という名称の使用が正式に許可されたのです。 この認可が下りた10月17日は、今でも「沖縄そばの日」として制定されています。
ちなみに:うどんとの違いは?
「小麦粉100%なら、うどんと何が違うの?」 という疑問ですが、最大の違いは「かんすい」を使っていることです。
- うどん: 小麦粉 + 水 + 塩
- 沖縄そば: 小麦粉 + 水 + 塩 + かんすい(灰汁)
「かんすい」はラーメンの麺に使われるアルカリ性の水で、これが入ることで独特のコシと黄色い色が生まれます。 つまり、沖縄そばは、 「うどんのような太さの、さっぱりしたラーメン」 というのが、化学的な正体なのです。
まとめ:名前を守った沖縄の魂
- 沖縄そばには「そば粉」が入っていない(小麦粉100%)
- 成分的には「うどん」や「ラーメン」に近い
- 法律違反として「沖縄ヌードル」への改名を迫られた過去がある
- 県民の活動により、特例として「そば」の名を守り抜いた
もしあの時、沖縄の人たちが諦めていたら、今のガイドブックには、 「沖縄名物! ソーキヌードル」 と書かれていたかもしれません。
次に沖縄そばを食べる時は、 「これが国と戦って名前を守り抜いた麺か……」 と噛み締めてみてください。カツオ出汁がいつもより少し、味わい深く感じるかもしれません。


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