はじめに
会社やドラマの社長室にある、頑丈な「金庫」。 小型のものでも数十キロ、大型のものなら数百キロと、とてつもなく重いですよね。
「これだけ重ければ、泥棒も簡単には持ち去れないだろう」 「鉄の塊だから重いのは当たり前だよね」
そう思っていませんか? 確かに重さは防犯にも役立ちますが、実はメーカーが金庫を重くしている最大の理由は、泥棒対策ではありません。 なんと、「火事」から中身を守るためだったのです。
鉄の箱だけでは、中身が燃える?
金庫の壁を叩くと、「コンコン」と硬い音がしますよね。 実は金庫の壁は、「鉄・コンクリート・鉄」のサンドイッチ構造になっています。
もし、金庫がただの「分厚い鉄の箱」だったとしたらどうなるでしょうか? 火事になった時、鉄は熱を伝えやすいので、あっという間に金庫内部が高温になります。 すると、たとえ金庫自体が溶けなくても、中に入れているお札や重要書類が、熱で自然発火して灰になってしまうのです(紙は177℃を超えると焦げ始めます)。
これを防ぐために、壁の中に大量の「気泡コンクリート」を詰め込んでいるのです。
コンクリートが「水」を出して冷やす!
「コンクリートって熱に強いの?」 ポイントは、コンクリートに含まれる「水分」です。
金庫に使われている特殊なコンクリートには、製造過程で含まれた水分(結晶水)が約20%ほど閉じ込められています。 火事になって周囲の温度が上がると、このコンクリートから「水分が蒸発(気化)」し始めます。
この時発生する「蒸気(スチーム)」が、金庫の内部に充満し、気化熱で庫内の温度を下げるのです。 つまり、金庫は火事の最中、自ら汗をかいて中身を冷やしているというわけです。
あのとてつもない重さは、「冷却水を含んだコンクリートの重さ」だったのです。
金庫には「寿命」がある
この仕組みを知ると、ある重要な事実がわかります。 それは、「耐火金庫には寿命がある」ということ。
コンクリートの中の水分は、何もしなくても少しずつ自然に抜けていきます。 日本セーフ・ファニチュア協同組合によると、耐火金庫の寿命は「製造から約20年」とされています。
20年を過ぎると、コンクリートがカラカラに乾いてしまい、火事になっても蒸気が出ず、中身が守れない可能性が高くなるのです。 「うちはお爺ちゃんの代からの金庫があるから安心!」というのは、実は一番危険な状態かもしれません。
まとめ:重さは「水の重さ」だった
- 金庫が重いのは、壁の中にコンクリートが詰まっているから
- 火事の際、コンクリートから「蒸気」が出て中身を冷やす
- ただの鉄の箱だと、熱で中のお札が燃えてしまう
- 水分が抜けるため、金庫の寿命は約20年
「金庫=防犯」のイメージが強いですが、実は「金庫=耐火(防災)」の役割の方が大きかったのです。 もし古い金庫を使っているオフィスなどがあったら、 「その金庫、もう水分が抜けて『ただの重い箱』になってませんか?」 と教えてあげると、感謝されるかもしれません。


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