はじめに
冬の寒い日、外に出た瞬間や、冷たい風に当たった時。 ゾワゾワッとして、腕や足に「鳥肌」が立つことってありますよね。
「うぅ、寒い寒い!」 皮膚がブツブツと盛り上がるあの現象。 名前の通り、羽をむしった後の鳥の皮に似ているから「鳥肌」と呼ばれますが、一体なぜ体はあんな気持ち悪い変化を起こすのでしょうか?
「体を温めようとしてるんでしょ?」 と思ったあなた、正解です。 しかし残念なことに、人間にとってはその機能、もうほとんど意味がないことをご存知でしょうか?
あれは、大昔の毛深かった頃の名残(なごり)であり、毛がなくなった現代人にとっては「無駄な努力」に過ぎないのです。
正体は「立毛筋」の収縮
鳥肌が立つメカニズムは単純です。 皮膚の下にある「立毛筋(りつもうきん)」という小さな筋肉が、寒さの刺激でキュッと縮まることで、毛穴が引っ張られて隆起します。
これにより、寝ていた体毛がピンと垂直に立ち上がります。 猫が威嚇する時に毛を逆立てるのと同じ現象ですね。
本当の目的は「空気のダウンジャケット」
では、なぜ毛を立てる必要があるのでしょうか? それは、動物にとっての防寒対策です。
フサフサの毛を持つ動物が毛を逆立てると、毛と毛の間に厚い空気の層ができます。 この空気が断熱材となり、体温を逃さないようにするのです。 つまり、「自前の毛を膨らませて、ダウンジャケットのように分厚くする」のが本来の目的です。
人間には「毛」がない…!
しかし、ここで悲しい現実があります。 私たち人間は、進化の過程で体毛が退化し、ツルツルの皮膚になってしまいました。
脳(自律神経)は、 「寒いぞ! よし、毛を立ててダウンジャケットを作れ!」 と命令を出して立毛筋を収縮させるのですが、肝心の「毛」がほとんど生えていません。
その結果、
- 皮膚が盛り上がる(ブツブツになる)
- うぶ毛がちょっと立つ
これだけで終わってしまい、空気の層を作るほどの保温効果は全く得られないのです。 つまり、鳥肌は「スイッチは入ったけど、肝心の機材(毛)がない」という、人体のちょっと切ないエラー動作だったのです。
感動した時にも出るのはなぜ?
ちなみに、素晴らしい音楽や映画に感動した時にも鳥肌が立ちますよね。 これは、脳が「強い興奮(感動)」を、「恐怖や驚き(非常事態)」と勘違いしてしまうからだと言われています。
動物は敵に出会った時、体を大きく見せるために毛を逆立てます(威嚇)。 感動による心拍数の上昇や震えを、脳が「敵だ! 戦闘態勢をとれ!」と誤解してしまい、場違いな鳥肌を立てさせてしまうのです。
まとめ:体の必死な抵抗
- 鳥肌は「立毛筋」が縮んで毛穴が盛り上がったもの
- 本来は毛を逆立てて保温する(ダウンジャケット化)ための機能
- 毛がない人間にとっては、ほぼ意味がない「進化の名残」
寒い時に自分の腕のブツブツを見たら、 「ああ、私の体は今、必死に『エア・ダウンジャケット』を着ようと頑張っているんだな……毛がないのに……」 と、いじらしい努力を褒めてあげてください。少しだけ寒さが紛れるかもしれません。


コメント