はじめに
進学や就職、転勤など、引越しの多いシーズン。 賃貸アパートを退去する際、一番トラブルになりやすいのが「原状回復費用(部屋を元通りにするお金)」です。
「壁紙が少し汚れているので全面張り替えですね」 「畳が焼けているので表替えが必要です」 などと言われ、預けていた敷金が全額没収されたり、追加で何万円も請求されたり……。
「自分が住んでいたんだから払うのが当然」と思っていませんか? 「実は、その請求の多くは、あなたが払う必要のないお金かもしれません」
「経年劣化」は家賃に含まれている
国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、明確なルールがあります。
「普通に暮らしていて自然に汚れたり壊れたりしたもの(経年劣化・通常損耗)は、大家さんが負担する」
つまり、毎月払っていた家賃の中に、すでに「自然な汚れの修繕費」は含まれているという考え方なのです。
払わなくていいものの例
具体的に、以下のものは原則として大家さん負担です(借主は払わなくていい)。
- 畳や壁紙の日焼け(太陽光による変色)
- 家具を置いたことによる床やカーペットのへこみ
- 画鋲(ピン)の穴(下地ボードの張り替えが不要な程度の小さな穴)
- 冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ(電気ヤケ)
これらを理由に「敷金から引きます」と言われたら、 「それはガイドラインでは貸主負担のはずですよね?」 と反論してOKなのです。
借主が払うもの(あなたが悪いもの)
もちろん、何でもかんでも無料ではありません。以下のような「使い方が悪くて汚したもの」は、借主が払う必要があります。
- タバコのヤニによる壁の変色・臭い
- 飲み物をこぼして放置したシミ・カビ
- 子供の落書き
- ネジや釘による大きな穴
- ペットによる傷や臭い
- 掃除をサボったせいでこびりついた油汚れ(通常の掃除で落ちないレベル)
住んだ年数で価値は下がる
さらに強力な武器があります。それは「減価償却(げんかしょうきゃく)」という考え方です。 例えば壁紙(クロス)の場合、 「6年住めば、価値はほぼ1円になる」 とされています。
もしあなたが6年以上住んだ部屋で、うっかり壁紙を破ってしまっても、その壁紙の価値はすでにほぼゼロ。 大家さんが「全面張り替えだ!」と言っても、あなたが負担するのはごくわずかな金額(または作業費のみ)で済むはずなのです。
まとめ:魔法の言葉「ガイドライン」
- 普通に生活してできた汚れや傷は、払わなくていい
- 日焼け、家具のへこみ、画鋲の穴はセーフ
- タバコや掃除サボりはアウト
- 「国交省のガイドラインを確認させてください」と言おう
退去の立ち会い(チェック)の時、業者の言いなりになってハンコを押してはいけません。 「ガイドライン」という言葉を出すだけで、相手は「おっ、この客は知識があるな。ふっかけられないぞ」と態度を変えることがあります。 敷金は、大家さんにあげたお金ではなく、あくまで「預けたお金」。正当な権利で取り戻しましょう。


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