はじめに
刑事ドラマの名シーンといえば、取調室。 黙秘を続ける犯人に、ベテラン刑事がそっと差し出す一杯の「カツ丼」。 「……うまいか?」 「ううっ……刑事さん……俺がやりました……!」
涙の完食、そして自供。 人情味あふれるシーンですが、実際の警察の取り調べでこれをやると、その刑事は処罰され、犯人の自供は無効になる可能性があります。
理由は「利益誘導(りえきゆうどう)」
なぜカツ丼を出してはいけないのでしょうか? それは、刑事訴訟法などで禁じられている「利益誘導」にあたるからです。
利益誘導とは、 「自白してくれたら、いいことをしてあげるよ(刑を軽くする、美味しいものをあげる)」 といって、自供を引き出すことです。
もしカツ丼をおごって自白させてしまうと、裁判で弁護士に、 「この自白は、カツ丼欲しさに嘘をついたものです(食べ物で釣られた自白です)」 と主張され、証拠として認められなくなってしまうのです。 刑事さんが自腹でおごることも、便宜を図ったとみなされるため厳禁です。
実際は何を食べているの?
では、取り調べ中の食事はどうしているのでしょうか? 基本的には、決まった時間の休憩中に、 「自費で頼んだ出前(お弁当など)」 を留置場の居室などで食べます。 メニューは丼ものやカレーなどですが、あくまで「自分のお金」で払います(所持金がない場合は、国費で出る質素な官弁(かんべん)が出ます)。
ドラマのように、取調室の机で刑事と向かい合って湯気を立てながら食べる……なんてことはありえません。
なぜドラマの定番になった?
この「取調室のカツ丼」の元祖は、1955年の映画『警察日記』だと言われています。 また、実際に戦後すぐの食糧難の時代には、人情派の刑事がポケットマネーで食べさせてあげた……という逸話が実在したそうです。
その時代のエピソードが、 「カツ丼=人情=自白」 という黄金パターンとして脚本家に受け継がれ、嘘だと分かっていても使われ続ける「お約束」になったのです。
まとめ:カツ丼は自分で食べよう
- 取調室でカツ丼が出ることはない
- 食べ物で釣って自白させるのは「利益誘導」という違法行為
- 裁判で自白が無効になってしまう
- 食事は自腹で、休憩時間に食べる
もしあなたが警察にお世話になることがあっても(ないことを祈りますが)、カツ丼が出てくることは期待しないでください。 「刑事さん、カツ丼は?」 と聞いても、 「ドラマの見過ぎだ。自分で頼め」 と返されるのがオチです。


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