はじめに
海で遭難した船が助けを求める時に発信する信号、「SOS」。 映画や小説でもおなじみの、世界共通の救難サインですよね。
この「SOS」という文字、何の略だと思いますか? 学校やテレビで、こう教わったことはありませんか?
- 「Save Our Souls(我々の魂を救え)」
- 「Save Our Ship(我々の船を救え)」
もっともらしい英語の頭文字に見えますよね。 しかし、「実は、SOSは何かの言葉の略ではありません」 単語としての意味は「何もない」のです。
選ばれた理由は「リズム」だけ
なぜ意味のない言葉が世界共通の合図になったのでしょうか? その理由は、「モールス信号」にあります。
無線通信がモールス信号(トン・ツーという電子音)で行われていた時代、緊急時に誰でも簡単に打てて、聞き間違いが起きにくい「リズム」が必要でした。
そこで採用されたのが、 「・・・(トントントン)」 = S 「ーーー(ツーツーツー)」 = O 「・・・(トントントン)」 = S
という組み合わせです。 この「・・・ーーー・・・」というリズムが、もっともシンプルで、雑音の中でも聞き取りやすかったため、たまたま「S」と「O」という文字が当てはめられただけなのです。
後付けで意味が作られた
つまり、「Save Our Souls」や「Save Our Ship」というフレーズは、SOSという信号が決まった後に、誰かが勝手に考えた「語呂合わせ(後付け)」に過ぎません。 日本でいうところの「良い国(1192)作ろう鎌倉幕府」のような覚え方と同じですね。
タイタニック号とSOS
ちなみに、このSOSが世界的に普及するきっかけとなった悲劇が、1912年の「タイタニック号沈没事故」です。
実はそれ以前、無線の世界では「CQD」という別の救難信号が使われていました。 しかし、タイタニック号の通信士が、新しい規格である「SOS」と、古い「CQD」の両方を必死に発信し続けたことで、SOSの認知度が一気に高まり、その後世界標準として定着したと言われています。
まとめ:言葉ではなく「音」の記号
- SOSは何かの単語の略ではない
- モールス信号で一番打ちやすく、聞きやすいリズムだったから
- 「Save Our Souls」などは後付けの覚え方
もし映画などで「Save Our Souls…」と言っているシーンがあっても、それは「演出」か「登場人物の勘違い」です。 SOSは言葉の壁を超えた、純粋な「音の命綱」だったのですね。


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