はじめに
お寿司屋さんで一番の高級ネタといえば、マグロの「大トロ」や「中トロ」。 口の中でとろける脂の甘みは、まさに王様の味ですよね。
しかし、もし江戸時代の人が現代の寿司屋に来たら、腰を抜かして驚くはずです。 なぜなら、 「えっ、あんなゴミを高いお金を出して食べているの！？」 と思うからです。
「実は、トロは昔、タダ同然で捨てられる『厄介者』でした」 今回は、トロが辿った大逆転のシンデレラストーリーを解説します。
かつては「猫もまたいで通る」不味い魚
冷蔵庫も冷凍技術もなかった江戸時代。 魚は鮮度が命でしたが、脂身の多い「トロ」の部分は、赤身に比べて水分が多く、すぐに腐って嫌な臭いを出してしまいました。
さらに、当時の日本人はあっさりした味を好んだため、脂っこいトロは「しつこくて不味い」と大不評。 お金を出して買う人などおらず、 「猫でさえ食べずにまたいで通る＝猫またぎ」 という屈辱的なあだ名で呼ばれ、捨てられるか、畑の肥料にされる運命だったのです。
腐りやすい「赤身」を守るための緩衝材？
当時、マグロの中で価値があったのは、醤油漬け（ヅケ）にして保存がきく「赤身」だけでした。 トロの部分は、大事な赤身が傷つかないように守るための「クッション材」や「皮」のような扱いで、店に着いたら即座に切り落とされて廃棄されていたのです。
戦後、日本人の舌が変わった
そんなトロが「高級品」に変わったのは、意外にも最近の昭和（戦後）になってからです。 理由は2つあります。
- 冷凍技術の進歩 冷凍技術が発達し、脂身を新鮮なまま保存・輸送できるようになったこと。
- 食の欧米化 日本人が肉（ステーキなど）を食べるようになり、「脂＝こってりして美味しい」という味覚に変化したこと。
この変化により、かつての「猫またぎ」は、一気に「海のダイヤ」へと昇格したのです。
まとめ：味覚は時代で作られる
- 江戸時代、トロは腐りやすく不味いとされていた
- 「猫またぎ」と呼ばれ、畑の肥料やゴミ扱いだった
- 昭和に入り、技術の進歩と味覚の変化で高級品になった
今、私たちがありがたがって食べている大トロ。 もしタイムマシンで江戸時代に行ったら、「これ、いらないからあげるよ」とタダで大量にもらえるかもしれませんね。
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