はじめに
女性の足を美しく見せる「ハイヒール」。 現代では女性のファッションアイテムとして定着していますが、「実は、もともと男性が履くために作られた靴」 だということをご存知でしょうか?
もし中世のヨーロッパにタイムスリップしたら、 髭を生やした屈強な男たちが、高いヒールの靴を履いて街を歩いている姿を目撃することになります。
一体なぜ、男性がヒールを履いていたのでしょうか?
きっかけは「馬」と「弓矢」
ハイヒールの起源は、16世紀頃のペルシャ(現在のイラン)の騎馬隊にあると言われています。
当時の兵士たちは、馬に乗ったまま弓矢を射る必要がありました。 しかし、馬の上で立ち上がって弓を構えると、足が滑ってバランスを崩してしまいます。
そこで発明されたのが、「かかとに高い段差(ヒール)をつけた靴」です。 このヒール部分を、馬具の「あぶみ」にガッチリと引っ掛けることで、体を固定し、正確に弓を射ることができるようになったのです。
つまり、ハイヒールは「スパイク」のような機能を持つ、軍事用シューズだったのです。
ヨーロッパで「強くて背が高い男」の象徴に
その後、ペルシャの使節団がヨーロッパを訪れた際、この靴を見た貴族の男性たちが、 「これ、強そうでカッコいいじゃん!」 と飛びつきました。
特に、当時のフランス国王「ルイ14世」は、背が低いことにコンプレックスを持っていたため、身長を高く見せるためにハイヒールを愛用しました。 (肖像画を見ると、赤いヒールの靴を履いて美脚を自慢している姿が残っています)。
こうして、ハイヒールは「権力と男らしさの象徴」として、男性の間で大流行したのです。
なぜ女性のものになった?
では、いつから女性の靴になったのでしょうか? 流行に敏感な女性たちが、「男性のファッションを取り入れる(男装)」の一環としてヒールを履き始めました。
その後、男性たちは「実用性」を重視するようになり、歩きにくいヒールを捨てましたが、女性たちは「美しさ(足が長く見える)」を重視してヒールを履き続けました。 その結果、いつしか「ヒール=女性のもの」という常識が定着したのです。
まとめ:ルーツは機能美
- ハイヒールはもともと「男性用(騎馬隊用)」
- 馬のあぶみに引っ掛けて体を固定するため
- ルイ14世など、王様も愛用していた
- 男性が履かなくなり、女性のファッションとして残った
今度、ハイヒールを履いて「足が痛いな……」と思っている女性がいたら、 「それ、昔は男の人が馬に乗るための戦闘靴だったらしいよ」 と教えてあげてください。 そう思うと、カツカツというヒールの音が、なんとなく勇ましく聞こえてくるかもしれません。


コメント