実は、ハトが首を振るのは「歩く反動」ではなかった…?判明した「高性能・手ブレ補正機能」

公園や駅前でよく見かけるハト。 彼らが歩く姿を思い出してみてください。

「クルックー」と言いながら、リズミカルに首を前後に振っていますよね。

あの動き、一体なんのためにやっていると思いますか?

「歩く反動で勝手に動いちゃうの?」 「ノリノリでリズムをとってるの?」

そう思ったあなた。残念ながら不正解です。 彼らはふざけているわけでも、リズムに乗っているわけでもありません。

実は、あの動きには数万円する最新カメラも顔負けの「超高性能な機能」が隠されていたのです。

今回は、科学的な実験で証明された「ハトの首振りの真実」について解説します。

目次

理由は「景色を止めるため」

結論から言います。 ハトが首を振っているのは、「見えている景色をブレさせないため」です。

私たち人間は、歩きながらでも視線を一点に集中させることができます。これは、眼球を自由に動かして補正できるからです。

しかし、ハトの目は顔の横についており、視野は広いものの、人間ほど眼球をキョロキョロ動かしてピントを合わせ続けることが得意ではありません。 そのため、体が前に進むと、目に見える景色もそのまま後ろへ流れてしまい、視界が常に「ブレブレの状態」になってしまうのです。

これでは、天敵を見つけたり、地面の小さなエサを探したりすることができません。 そこで彼らが進化の過程で編み出した秘策こそが、あの「首振り」なのです。

スローモーションで見ると分かる「首振り」の正体

「首を振る」というと、前後にブンブン揺らしているように見えますよね? しかし、ハイスピードカメラで解析すると、実は全く違う動きをしていることが分かります。

ハトが行っているのは、以下の2つの動作の超高速ループです。

  • ホールド(固定): 頭を空間の「一点」にピタッと固定する(体だけが前に進む)
  • スラスト(前進): 首が伸びきったら、頭を「サッ」と素早く体の方へ引き戻す(前へ移動させる)

つまり、「頭を空中に置き去りにして、景色を静止画として捉える」→「急いで体を追いかける」という動作を繰り返しているのです。

人間で言うなら、手ブレ補正機能がついた高性能カメラ(ジンバル/スタビライザー)のようなことを、自分の首だけでやってのけているわけです。彼らは歩いている間、世界を「コマ送り」のような鮮明な画像として認識していると考えられています。

証拠となった「ランニングマシーン実験」

「本当に? ただのクセじゃないの?」

そう疑う方のために、この説を裏付ける有名な実験をご紹介しましょう。 1978年、カナダ・クイーンズ大学のバリー・フロスト博士(B.J. Frost)が行った研究です。

博士は、ハトを「ランニングマシーン」の上に乗せて歩かせるという、なんともシュールな実験を行いました。

ハトが一定の速度で歩く中、周囲の景色が変わらない(自分が進んでいない)状況を作ると、どうなると思いますか?

【実験結果】 ハトは一切、首を振らなくなった。

体は一生懸命歩いているのに、首だけがピタッと止まったままになったのです。 周囲の景色が動いていないため、ハトの脳が「視界がブレていない=補正する必要がない」と判断し、首振り機能をオフにしたのです。

この実験により、ハトの首振りは「歩行の反動」ではなく、「視覚情報を安定させるための能動的なセンサー機能」であることが完全に証明されました。

まとめ:ハトは「生体スタビライザー」だった

普段なにげなく見ているハトのコミカルな動き。 あれは、ふざけているわけでもリズムに乗っているわけでもなく、「超高性能な手ブレ補正機能」をフル稼働させて、必死に世界をクリアに見ようとしている姿だったのです。

次に街中でハトを見かけたら、こう思ってあげてください。

「おっ、今日もスタビライザーの調子が良さそうだな」

そう思うと、あの動きが少しだけカッコよく見えてきませんか?

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