はじめに
お正月、床の間や玄関に飾る「鏡餅」。 真っ白なお餅の上に、ちょこんと乗ったオレンジ色の果物。かわいいですよね。
あれを見て、誰もが「ああ、ミカンが乗ってるな」と思います。 そして、鏡開きの日には「このミカン、食べちゃおう」となりますよね。
しかし、「実は、鏡餅に乗せる正式な果物は『ミカン』ではありません」 本来は、ミカンによく似た「橙(ダイダイ)」という別の柑橘類なのです。
なぜ、わざわざミカンではなく「橙」でなくてはいけないのでしょうか?
名前が「代々」に通じるから
最大の理由は、その名前にあります。 「橙(ダイダイ)」という響きが、「代々(だいだい)」に通じるからです。
「家が代々(だいだい)栄えますように」 「家族の健康が代々(だいだい)続きますように」
という、子孫繁栄の願いを込めた「縁起物のダジャレ」なんですね。 ミカンではこの意味になりません。
「落ちない」という凄い性質
さらに、橙には植物として非常に珍しい特徴があります。 普通の実は熟すと木から落ちますが、橙の実は熟しても木から落ちません。 なんと、冬を越して夏になっても木に残ったままで、「一度実ったものが数年間落ちずに枝についている」のです(しかも夏になるとまた緑色に戻ります)。
この「落ちない(親が生きているうちに子供が育つ)」という性質も、家族の繁栄を象徴する縁起が良いものとされた理由です。
なぜ今は「ミカン」なの?
では、なぜ現代の家庭ではミカンを乗せているのでしょうか? 理由はシンプルで、「橙は酸っぱくて苦いから」です。
橙はポン酢などの材料にはなりますが、そのまま食べるには向いていません。 また、スーパーであまり売られていないため、手に入りやすく美味しく食べられる「温州みかん」で代用するのが一般的になったのです。
ちなみに「鏡」って何?
余談ですが、そもそもなぜ「鏡餅」という名前なのでしょうか? 「鏡には見えないけど…」と思いますよね。
これは、今のガラスの鏡ではなく、昔の「青銅の鏡(銅鏡)」の形に似ているからです。 三種の神器の一つである「八咫鏡(やたのかがみ)」を模しており、神様の魂が宿る場所として、あの丸い形が作られたのです。
まとめ:ミカンでも願いは込められる
- 鏡餅の上に乗せる正式な果物は「橙(ダイダイ)」
- 「代々栄える」という語呂合わせと、「実が落ちない」性質から選ばれた
- 今は食べやすい「ミカン」で代用するのが一般的
もしスーパーで「葉っぱ付きの橙」を見かけたら、それはとてもラッキーで本格的なアイテムです。 今年はミカンを乗せる時に、「本当はダイダイっていう、落ちない果物があるんだよ」と思い出しながら飾ってみてください。


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