はじめに
森に入ると、静寂に包まれた心安らぐ空間が広がっています。 木々は何も語らず、ただ一本一本が独立して生きているように見えますよね。
しかし、近年の科学(植物学)が、その常識を覆しました。 実は、森の地下では、私たちの想像を絶する「おしゃべり」が行われているのです。
木々は、根っこを通じて複雑なネットワークを作り、 「お腹すいた?」「あっちから虫が来たぞ!」「大丈夫か?」 と、情報を交換し、助け合って生きているのです。 科学者たちはこれを、インターネット(ワールド・ワイド・ウェブ)になぞらえて、「ウッド・ワイド・ウェブ(Wood Wide Web)」と呼んでいます。
地下の「光ファイバー」=菌類
どうやって会話しているのか? その正体は、木の根に共生している「菌類(キノコの菌糸)」です。
この菌糸は、森中の木の根と根を繋ぎ合わせ、巨大な「地下ケーブル」のような役割を果たしています。 木はこのケーブルを使って、炭素(栄養)や水分、そして「化学信号(情報)」を、離れた場所にいる仲間の木へと送っているのです。
「マザーツリー」の愛
このネットワークの中で特に感動的なのが、「マザーツリー(母なる木)」の存在です。 森の中で一番大きく、根を広く張った古木は、このネットワークの「ハブ(中心)」になります。
マザーツリーは、自分の根を通じて、近くにいる「自分の子供(若木)」を見分けることができます。 そして、自分の子供が日陰にいて光合成ができず、栄養不足になっていると知ると、自分の栄養を地下ケーブルを通じて子供に送り届ける(授乳する)のです。
森の木が枯れずに育つのは、見えないところで母親が栄養を送っているからかもしれない……。 植物にも「家族愛」があるなんて、信じられますか?
「敵襲!」をメールで警告
会話の内容は、愛だけではありません。「警告」もあります。 ある木が害虫に襲われて葉っぱを食べられると、その木はすぐに地下ネットワークを通じて、周囲の木々に「緊急信号」を送ります。
信号を受け取った周囲の木々は、まだ虫が来ていないのに、葉っぱの味を不味くする化学物質を出したり、防衛体制を整えたりします。 「俺がやられた! お前たちは準備しろ!」 と、仲間に危機を知らせているのです。
切り株が生き続ける謎
森の中で、葉っぱも枝もない、ただの「切り株」が、何十年も腐らずに生き続けていることがあります。 光合成ができない切り株が、なぜ生きられるのか?
それは、周りの木々が、ネットワークを通じて切り株に栄養を分け与えているからです。 なぜ助けるのか、その理由はまだ完全には解明されていませんが、 「かつて森を支えてくれた長老への敬意」 なのか、あるいは 「切り株が持っている過去の記憶(病気への耐性など)が必要だから」 なのか。 いずれにせよ、森は「弱者を切り捨てない社会」を築いているのです。
まとめ:森は「ひとつの生命体」
- 木々は地下の菌糸ネットワーク(ウッド・ワイド・ウェブ)で繋がっている
- 炭素や化学信号を送り合い、「会話」や「助け合い」をしている
- 親木(マザーツリー)は、自分の子供を見分けて栄養を送っている
- 森は木々の集合体ではなく、全体でひとつの「巨大な生命体」かもしれない
次に森や公園で大きな木を見かけたら、その足元を想像してみてください。 そこには、インターネットよりも複雑で、愛に満ちた「おしゃべり」が広がっているはずです。 そう思うと、木漏れ日がいつもより少しだけ、神秘的に見えてきませんか?


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