はじめに
氷の世界に君臨する、真っ白でフワフワな「シロクマ(ホッキョクグマ)」。 その名前の通り、全身が「白い毛」で覆われている動物……だと思っていませんか?
「実は、シロクマの毛は白くありません」 さらに言うと、 「毛の下の地肌は、驚くことに『真っ黒』」なのです。
今回は、シロクマが隠し持っている意外な「色」の秘密について解説します。
毛の正体は「透明なストロー」
「白くないなら何色なの?」と思いますよね。 正解は、「透明」です。
シロクマの毛を顕微鏡で見ると、色はついておらず、中心が空洞になっています。 例えるなら、「中が空っぽの透明なストロー(マカロニ)」のような構造をしているのです。
では、なぜ白く見えるのでしょうか? それは、「光の乱反射」のおかげです。 透明な毛の中で太陽の光が複雑に反射(散乱)することで、人間の目には白く輝いて見えているのです。 かき氷や雲が、実は透明な水(氷)なのに白く見えるのと同じ原理ですね。
なぜ肌は「真っ黒」なの?
さらに驚きなのが、その透明な毛の下にある皮膚の色。 実は、シロクマの鼻や肉球を見ればわかる通り、全身の皮膚は「真っ黒」なんです。
これには、極寒の北極で生き抜くための重要な理由があります。 黒い色は、太陽の熱を吸収しやすい性質がありますよね?(夏に黒い服を着ると暑いのと同じです)。
- 「透明な毛」が光を奥まで通す。
- 「中空の毛」が空気を溜め込んで保温する(ダウンジャケットと同じ)。
- 「黒い肌」が太陽熱を効率よく吸収して体を温める。
つまり、シロクマは「透明」と「黒」の組み合わせによる、超・高機能な太陽光発電システムのような体を持っているのです。
動物園のシロクマが「緑色」になる理由
時々、動物園のシロクマがうっすら「緑色(ミドリグマ)」になっているのを見たことがありませんか? あれは、毛の中の空洞(ストロー部分)に、「藻(も)」が入り込んで繁殖してしまった状態です。
日本の夏など、湿度と気温が高い環境では、毛の中で藻が育ちやすくなってしまうのです。 毛が透明で中が空洞だからこそ起こる、珍しい現象なんですね。
まとめ:白く見えるのはハイテクな証
- シロクマの毛は「透明」で、中は空洞
- 光が乱反射して「白」に見えているだけ
- 地肌は、熱を吸収するために「真っ黒」
- 毛の中に藻が生えると緑色になる
「シロクマ」改め、「透明毛・黒肌クマ」。 次に水族館や動物園で彼らを見るときは、鼻の黒さを見て「全身あの色なんだな…」と想像してみてください。


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